大きめの氷を入れたグラスにそっと注いで、
ゆっくり氷が溶けるスピードに合わせ、
自分の時間をアップルブランデーにゆだねてみてはいかがでしょうか。
ふとした時、ふんわりと香りが花開きます。
飯綱町の風景があなたの目の前に広がりますように・・・
信州と同じように、フランスにもりんごの名産地がある。
ぜひ見てみたいと、サンクゼールの創業者である久世良三・まゆみ夫妻が1984年に新婚旅行で訪れたのは、フランス・ノルマンディ地方でした。
仕事も軌道に乗り、やっと二人の時間ができ始めた頃のことです。
すべては、その地に導かれたことから始まりました。
遠くまで広がる農園にはりんごがたわわに実り、木の下では草を食む牛、耳をすませば陽気な歌声が聞こえてきます。
村のレストランでは幸せそうに食事を楽しむ人々。ノルマンディの名産品カルヴァドスやシードルを片手に。
想像をはるかに超えたその風景は、歴史と文化がどっしり大地に根付いた場所でした。
まるでりんごの木のように、その地に根を張り生きる人々。
決して便利な場所ではないけれど、この地を愛し、誇りをもって生きている。
当時の日本は「豊か」で日常生活は物にあふれ、食べたいものが簡単に手に入りました。
そんな日本の「豊かさ」とは違う「本物の田舎の豊かさ」「大人の文化」に感銘を受け、すっかりノルマンディが久世の夢となったのです。
りんごの名産地信州でも同じような文化を、生活を、この手で作り上げてみたい…夢は広がりました。
りんご畑の中に佇むレストランを、蒸留所を、自然の恵に感謝し心から楽しむ生活の時間を。
それは30年ほど前のことでした。
日本に戻り夢の第一歩を踏み出します。
旧三水村(現飯綱町)にサンクゼールの丘をつくり始めます。
小高い丘の上からの展望に心奪われ、町から支援をいただきレストランとジャム工場、本店が出来ました。
長野県飯綱町は、県の北部に位置し、海抜およそ600m、人口1万1千人の小さな町です。(2018年現在)
標高2000mを超える山もある北信五岳に囲まれた、浅いすり鉢型の地形は水はけがよく、果樹栽培に適しています。
最盛期には全国に流通するりんごの100個に1個は飯綱町産だといわれたほどで、りんごは誰もが誇る町のシンボルです。
サンクゼールはこの町のりんごでシードルを造り始めました。
町のことを知るうちに、町の天然記念物のりんご「高坂りんご」の存在を知ります。
大きさはピンポン玉ほどの小ささ。
かつては盛んに栽培されていたそうです。
しかし大きく甘い西洋品種のりんごが普及するにつれ、小さく渋みや苦みがある高坂りんごの栽培は衰退し、一時期は日本からほぼ姿を消してしまいました。
そんな状況を憂えた旧牟礼村の農家、故・米沢稔秋氏が高坂りんご存続のために、村に1本だけ残っていた木から、個人的に根分けし少しずつ増やす取り組みを始めました。
現在では53軒の農家が栽培するに至っています。
サンクゼールでは高坂りんごを盛り上げるため、2008年から高坂りんごを使ったシードル造りに取り組み、生産数も年々増やしています。
そして、町の方々と一緒に「高坂りんご」を使用したブランデーを造るプロジェクトが発足しました。
ついに、久世が夢見ていた蒸留所が飯綱町のサンクゼールに造られることになったのです。
2018年、長野県飯綱町で、幻の和りんご「高坂りんご」をブレンドした日本で、世界で、初めての「いいづなアップルブランデー」が誕生しました。
透明感のある、出来たてのブランデーをホワイトブランデーと呼びます。
樽熟成をあえて行わず、素のりんごの香りと味を思いっきり楽しむ、そんなブランデーです。
甘く爽やかな香りの西洋りんご「ふじ」と、しっかりとしたボディの「高坂りんご」が合わさることで、すっきりとした飲み口に深みと複雑さが加わります。
風習は違うけれど、土地を愛し、誇りに想うノルマンディと似た文化がこの地に新しいカタチで根付こうとしています。
愛する飯綱町の皆さんと共に…
テイスティング コメント
りんごのやさしい甘い香りの中に、白檀のような和の香りを楽しむことができます。
口に含むとアルコールの厚みを感じた後に、ややビターなニュアンスと、やさしい飲み口のブランデーです。
ロックや水割り、カクテルのベースとしてもおすすめです。